企画要旨

『景観開花。』は、土木デザインに関心のある若者へその力を試せる場を提供するとともに、多くの人々へ向けて土木デザインの可能性を示すための設計競技イベントである。
 高度経済成長期の日本では早急な社会基盤整備が求められ、特定の機能を果たすためだけの画一的な土木施設が多く生み出された。しかし一定の社会基盤が整うにつれ、その場所が持つ意味や役割に合い、風景に調和した土木デザインを求める機運が高まりつつある。
 そういった土木デザインが美しい景観を実現するものと信じ、『景観開花。』は誕生した。
 一昨年迄の15年に渡る景観開花の歴史を振り返ると、第1回から第10回に至るまでの10回は未来へつなぐ新時代の土木デザインの提案を求めてきた。また第11回から第15回までの5回は「まち」に潜む問題の顕在化に対し、人々の生活の接点としての「まち」とそれを支える土木構造物へのあり方についての提案を求めてきた。
 1年の開催休止を経て、本年度は「土木デザインに関心のある若者へその力を試せる場」、「多くの人々へ向けて土木デザインの可能性を示す」という本イベントの原点に立ち返る。そして、『景観開花。』の誕生以来も技術・システムの進歩、社会情勢の変化によって私たちの暮らし、まちは大きな変化を遂げてきたことを鑑み、激変する社会情勢に合わせた今後の新たな土木デザインのあり方の提案を新たな形を含めた様式で行う土木設計コンペとしてリニューアルする。
 リニューアル初回となる本年度は、「Re:ver. Space」と題し、「新しい『都市』生活様式」という観点から都市における「河川」のある景観のあり方を問う。応募者には「新しい『都市』生活様式」で「まち」に起きうる諸問題に対して河川空間のデザインによって景観を創造する事によって挑んでもらいたい。これからの土木デザインが生み出す美しい景観が「新しい『都市』生活様式」の課題解決へとつながるような提案が生まれることを期待している。

令和2年7月1日
景観開花。実行委員会


設計テーマ

「Re:ver. Space」

詳しくは募集要項ご覧ください。


審査方法

本年度は,一次審査会,最終審査会ともに,オンラインでのweb会議ツールを用いたweb開催とする。一次審査会では、パネルデータ・写真データ・プレゼンテーション動画を用い、入賞作品を5点前後決定する。また後日、最終審査会を公開で開催(live配信を予定)し、入賞者は作品のプレゼンテーションと質疑応答を行う。審査員はこれらにより最優秀賞と優秀賞を決定し、それ以外の入賞作品を佳作とする。


審査日程

エントリー開始  |2020 年 7月7日
エントリー締切  |2020年10月4日
提出物締切    |2020年10月11日
一次審査会    |2020年11月1日
最終審査会    |2020年11月21日


賞金額

賞金 |最優秀賞20万円 ✕ 1点
    優秀賞10万円 ✕ 1点
    佳作 4万円 ✕ 数点
    特別賞 2万円 ✕ 数点

参加賞|一次審査会における審査委員からの自作品の講評映像


審査委員紹介

審査委員長

篠原 修
Osamu SHINOHARA

土木設計家
東京大学名誉教授
景観開花。2020 審査委員長

1945年生まれ。
政策研究大学院大学名誉教授・客員教授
エンジニア・アーキテクト協会 会長
GSデザイン会議 代表
(景観開花。審査委員長:2004年~)

主な受賞歴
2010年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(新豊橋)
2009年 鉄道建築協会賞停車場建築賞(JR四国・高知駅)
2008年 ブルネル賞(JR九州・日向市駅)
2008年 土木学会デザイン賞 最優秀賞(苫田ダム空間のトータルデザイン)
2004年 グッドデザイン賞 金賞(長崎水辺の森公園)
ほか

主な著書
河川工学者三代は川をどう見てきたのか 安藝皎一、高橋裕、大熊孝と近代河川行政一五〇年(農文協プロダクション、2018年)(平成30年度土木学会出版文化賞)
内藤廣と東大景観研の十五年(鹿島出版会、2013年)
ピカソを超える者は―評伝 鈴木忠義と景観工学の誕生(技報堂出版、2008年)
景観用語事典 増補改訂版(彰国社、2007年)
土木デザイン論(東京大学出版会、2003年)(平成17年度土木学会出版文化賞)
ほか

関連するページ
エンジニア・アーキテクト協会 メンバー紹介
http://www.engineer-architect.jp/member/list/124/
政策研究大学院大学 教員・所属研究者情報
https://www.grips.ac.jp/list/facultyinfo/shinohara_osamu/


審査委員

岩瀬 諒子
Ryoko IWASE

建築家
京都大学建築学専攻助教
岩瀬諒子設計事務所主宰

新潟県生まれ。
京都大学大学院在学中「景観開花。2007」にて佳作を受賞。
EM2N Architects (スイス、チューリッヒ) 、隈研吾建築都市設計事務所における勤務を経て、2013年大阪府主催実施コンペ「木津川遊歩空間アイディアデザインコンペ」における最優秀賞受賞を機に、岩瀬諒子設計事務所を設立。建築空間からパブリックスペースまで、領域にとらわれない設計活動を行う。2017年木津川遊歩空間「トコトコダンダン」竣工。

主な受賞歴
2019年 第17回ヴェネチアビエンナーレ国際建築展 日本館 出展作家として選出
2019年 ベストデビュタント賞
2019年 東京藝大美術エメラルド賞
2018年 日本造園学会学会賞設計作品部門
2018年 グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)
2018年 和歌山市和歌山城前広場及び市道中橋線設計事業者の公募型プロポーザル1等※
2013年 旭硝子株式会社主催実施コンペ「U30ガラス建築の設計競技」最優秀賞※
ほか

関連するページ
RYOKO IWASE 岩瀬諒子設計事務所
http://www.ryokoiwase.com/


忽那 裕樹
Hiroki KUTSUNA

株式会社E-DESIGN代表取締役
ランドスケープデザイナー、まちづくりプロデューサー

1966年生まれ
大阪府立江之子島文化芸術創造センタープロデューサー
国土交通省ミズベリング・プロジェクト諮問委員
大阪市立大学客員教授

主な受賞歴
2019年 地域創造大賞(総務大臣賞)「大阪府立江之子島文化芸術創造センター」
2018年 GOOD DESIGN 賞 金賞(経済産業大臣賞)「トコトコダンダン」「ミズベリングプロジェクト」
2018年 第 8 回みどりのまちづくり賞ランドスケープデザイン部門 大阪府知事賞「日本生命病院「四季彩ガーデン」」
2017年 第 33 回都市公園等コンクール特定テーマ部門国土交通大臣賞「草津川跡地公園(区間 5 )」
ほか

主な著書
「シビックプライド2【国内編】」(宣伝会議、2016年)
「都市を変える水辺アクション 実践ガイド」(学芸出版、2015年)
「マゾヒスティック・ランドスケープ」(学芸出版、2006年)
「ランドスケープ批評宣言」(INAX出版、2002年)
「都市環境デザインの仕事」(学芸出版、2001年)

関連するページ
株式会社E-DESIGN
http://www.edesign-inc.com/


崎谷 浩一郎
Koichiro SAKITANI

シビレル・エンジニア
株式会社イー・エー・ユー 代表取締役

1976年生まれ
日本各地で多くの土木事業・景観設計に関わる。
NPO法人GSデザイン会議 幹事長
発酵するカフェ麹中 代表

主な受賞歴
2019年 都市景観大賞特別賞(山中湖村平野 ゆいの広場ひらり)
2011年 グッドデザイン賞(大分竹田白水ダム鴫田駐車場・トイレ)
2010年 グッドデザイン賞(長崎中央橋)
2010年 グッドデザイン賞(旧佐渡鉱山北沢地区広場および大間港広場)
ほか

関連するページ
株式会社イー・エー・ユー 
http://www.eau-a.co.jp/


西村 浩
Hiroshi NISHIMURA

建築家/クリエイティブディレクター
株式会社ワークヴィジョンズ 代表取締役

株式会社リノベリング 取締役
オン・ザ・ルーフ株式会社 代表取締役
呉服元町ストリートマーケット株式会社 取締役
マチノシゴトバCOTOCO215 代表
 (景観開花。審査委員:2005年, 2008年〜)

1967年佐賀市生まれ
東京大学工学部土木工学科卒業、同大学院工学系研究科修士
課程修了後、1999年ワークヴィジョンズ一級建築士事務所(東京都品川区)を設立。
土木出身ながら建築の世界で独立し、現在は、建築・リノベーション・土木分野のデザインに加えて、全国各地の都市再生戦略の立案にも取り組む。2014年には佐賀市呉服元町に同社佐賀オフィス兼シェアオフィス「COTOCO215」を構え、2020年にはベーグル専門店「MOMs’Bagel」の事業主となり、マイクロデベロッパーとしても佐賀のまちづくりにも取り組んでいる。
日本建築学会賞(作品)、土木学会デザイン賞、BCS賞、ブルネル賞、アルカシア建築賞、公共建築賞 他多数受賞。2009年に竣工した、北海道岩見沢市の「岩見沢複合駅舎」は、2009年度グッドデザイン賞大賞を受賞。

関連するページ
株式会社ワークヴィジョンズ
http://www.workvisions.co.jp/
株式会社リノベリング
http://renovaring.com/


(敬称略・五十音順)

審査委員メッセージ

篠原 修 先生(審査委員長)

 日本の都市のほとんどは、戦国末から江戸時代初期にかけての城下町を起源とする。律令時代は唐、明治以降は西欧、それが都市計画のお手本だった。だが城下町だけは日本オリジナルの都市計画だと思われる。
 その城下町の骨格を決めているものは、何だろうか?。
 東京のそれは明治以来の鉄道?、東京の前の江戸は?。仙台は戦災復興の街路?、江戸初期の伊達は何を骨格に仙台を?。
 道路、鉄道を骨格とする陸の都市から、河川、掘割を骨格とする水の都市を考えてみよう。

岩瀬 諒子 先生

 デザインコンペは「カタチ」を問うと同時に「ものの見方」を問うものだと考えています。
 突然やってきたコロナ禍で今までの「当たり前」が変容し、戸惑うことも多いかと思いますし、私自身も戸惑う一人ですが、そもそも土木分野とは災害のたびにひっくり返された現実と対峙し、それを更新し築き続けてきた分野ともいえるでしょう。
 デザイン思考という創造的な思考を通じた新しいまなざしに出会い、これからの風景を一緒に考えていく機会を楽しみにしています。

忽那 裕樹 先生

 我々の生活環境は、愛着と誇りを持てる唯一無二な場として共有されることによって、豊かなものとなる。川の流れは、それを生み出す地形と共に、地域固有の魅惑的な姿を有しており、この豊かな生活の基礎となりうる。時に牙をむいて我々に襲い掛かることもある河川空間と、どのように向き合い、もたらす恵みをどう享受するのか。先人たちの長い年月の努力の積み重ねに畏敬の念を持ち、新たな時代の暮らしを支える人々の関りを実現するための提案に期待したい。

崎谷 浩一郎 先生

 スタイルではなく、生命を感じたい。
 デザインと聞くと、何か目新しい奇抜さを求められていると思いがちですが、土木のデザインの本質はあくまで日常の延長線上に価値を生み出すことにあります。本来その場所にあった価値、新たに生み出す価値、それらは常にそこに暮らす人々、訪れる人々の生活様式とともにあります。土着的かつ属人的、そして生命感あふれる空間の提案を期待しています。

西村 浩 先生

 生物学者、福岡伸一さんは、生命は「常に危機に晒されている」からこそ「自分で細胞を絶え間なく壊し続けていることで安定している」とし、その状態を動的平衡と呼んでいます。
 日本は今、3つの未体験ゾーンへと突入しました。1つ目は超人口減少、2つ目はコロナ禍、3つ目は近年頻発する超災害です。史上経験したことない社会状況だからこそ、これまでの常識や慣習を敢えて疑い、まさにこれからの「動的平衡」への想像力が求められていると思います。みなさんの提案を楽しみにしています。